チヌフカセ釣りの名手・大知昭(おおち あきら)さんのチヌ釣りのルーツや数々の栄冠を手にしたトーナメントへの取り組みなどを連載で紹介! ※プロフィールなどは2014年当時のもので現在と異なるものもあります。写真は主にモノクロとなります。ご了承ください。
第2回LF磯チヌクラシック
大知さんが優勝を決めた「第1回LFクラシック」。翌2007年には第2回大会が同じく広島湾で開催された。
前回同様にチヌ釣り大会で好成績を収める名手が集合。参加選手は「大知昭」「吉田賢一郎」「笹川忠弘」「木村公治」「石村仁」「藤原実浩」「内海通人」「南康史」「島田拓也」(順不同)の8名。
全員が広島湾での釣りにも精通していて誰が勝ってもおかしくなかったのだが、この大会でも大知さんがぶっちりぎで優勝を飾った。その差はやはり遠投力だった。
「7月の広島湾はチヌの活性が高くてマキエに浮きやすいけど、エサ盗りが多いし、マキエについて沖にも出ていく。人と並んで釣るときは、誰よりも沖に投げることで言い方は悪いけど、ほかの人がエサ盗り担当になってくれるんだよ。だからこのときも最初から飛ばしていくつもりだったね」
1回戦、大知さんは南選手と藤原選手と対戦。2選手とも遠投で追いすがるが、やはり大知さんが抜きん出ており、追いつけなかった。とにかくこのときの大知さんの遠投はすさまじいものがあった。
「この年に『鱗海スペシャル』の2代目がリリースになっていたんだけど、その0.6号でこの大会に挑んだんだよ。軽快な操作性と粘り持っていたから『大知ウキ遠投SP』を遠投しやすくてね。釣りのリズムができていたんだと思う」
大知さんは当時を振り返ってそう語ってくれた。
釣りのリズムというのは不思議なもので、かみ合っているときは狙った通りに必ずよい結果がついてきていたという。逆にどんなにコンディションがよくてもリズムが合わないときはダメで、空回りした感じになるのだと大知さんは教えてくれた。そして続けて、
「このあたりがまだまだ詰めが甘い感じ。一生かけて修行だろうね」
と大知さん。なんともストイックである。
試合のほうだが、決勝戦は大知さん、木村選手、吉田選手が勝ち上がってきた。いずれも遠投を得意とする選手だけに投げ合いの展開となったが、やはり2選手よりもさらに沖を釣る大知さんがリードを広げていく。
といってもただ遠くへ投げれば釣れるというわけではない。広島湾特有の2枚潮などもあり、仕掛けとマキエの合わせ方、サシエの沈め方などを調整しないと釣れなかった。大知さんはそれらをこまかくアジャストさせて連続ヒットへとつなげていた。
「とにかくすごい試合でした」という、後ろで試合を観戦していた選手の多くの感想がその凄さを物語っている。
決勝戦の結果は大知さん6,740g、吉田選手0g、木村選手0g。完全勝利で大知さんが連覇を成し遂げた。
「前年度勝ったし、自分の釣り方が見られているわけだからみんな研究してきてたと思うよ。遠投に活路を見出してハマった結果だね。リズムの話じゃないけど、もし一歩間違えれば負けていたかもしれないからね。結果だけみれば自分が大幅リードの勝利だけど、難しい試合だったと思う」
勝って兜の緒を締めよという言葉があるが、まさに大知さんはその典型的なタイプ。常に自分の釣りに疑問を抱いているのだ。これが名人といわれるゆえんだろうし、結果を生み出す原動力といえる。
第3回LF磯チヌクラシック
2008年に開催された第3回LF磯チヌクラシック。大知さんにかかるのは「3連覇」を達成するかどうか。この3回で終了が決まっていた同大会には「大知昭」「石村仁」「南康史」「藤原実浩」「内海通人」「木村公治」「藤井栄」「吉田賢一郎」「島田拓也」(順不同)という強豪が集まった。
「ラストだからね。気合が入っていたよ」
大知さんもこうなったら3連覇というのが頭にあったようだ。しかし現実は大知さんの狙い通りにはならなかった。優勝は南選手が勝ち取ったのだ。
大知さんは1回戦で敗退。しかもこのときの勝ち上がり選手は南選手。その勢いをそのまま持続して優勝したという感じだった。
このときのことを大知さんに聞くと苦笑いしながら「いや〜、南くんがよく釣ったからだよ。自分はまだまだだと痛感したよ」と話してくれた。言い訳はしないのが大知さんらしいが、実はこのとき会場に弟の豊さんがやってきて結果を聞き、こっそり敗退の原因を教えてくれた。
「潮とかもあるんだろうけど、目の前の状況にアジャストさせようと、講じた策がハマらなかったんだろうね。兄貴でもたまにあるんだよ。ボタンの掛け違いっていうのかな。この大会はいけそう(勝てそう)だなってときに限ってそういうことがある。ホームグラウンドだから情報量も多いしね。余計に判断に迷うんだと思う」
一番長く大知さんの釣りを見てきた豊さんならではの分析とコメントだ。
「一生かけて修行だね」
前記した大知さんの言葉が蘇る。いつもベストの釣りをするため、大知さんは「名人」と呼ばれるようになっても日々自身の釣りと向き合っているのだ。
【第15話】に続く
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