釣れた魚の締め方
釣った魚に、下記のふた手間をかけると、よりおいしくいただくことができます。ここでは活け締めや氷締めにサバ折り、神経締めを紹介します。
①魚をあばれさせずに即死させる
②血管を切って血抜きする
活け締め
刃物やギャフを使って魚の脳に傷を入れて急死させ、血を抜くことを活け締めといいます。活け締めにすると、鮮度がいい状態を長く保つことができます。マダイやハマチなど血液の量が多い中型から大型の魚には活け締めが適しています。
活け締めにすると、死後硬直が始まる時間を遅らせて、鮮度のよい状態を長く保つことができます。魚をそのまま死なせる野締めは死後硬直がすぐに始まり、鮮度が落ちやすくなります。
活け締めの手順は、まずナイフやギャフなどで魚の脳を突き刺して、えぐるように動かします。魚の動きが止まって口を大きく開ければ、うまく締まった証拠。
次にエラの付け根にナイフを突き刺し、背骨の下にある太い血管を断ち切る。シッポの付け根にある血管も断ち切ると、血が抜けやすくなる。
脳の位置は、魚を上か正面から見ると、みけんの間が目安になる。横から見たときは目の後ろ、斜め上。
活け締めの手順(一例)
①ナイフや包丁、ギャフなどで脳を刺して即死させる。
②エラから刃先を入れて、背骨の下にある太い血管を切る。
③尾に続く血管にも切り込みを入れる。
④海水をくんだバケツやバッカンなどに魚を入れて、血を抜く。
血抜きをする理由
血抜きをすると、身の劣化や生臭さ、うっ血を防ぐことができます。しっかりと血抜きをした魚の筋肉は真っ白になり、不要な血が抜けているので血合いの色は本来の鮮やかなピンク色に近くなります。
体長が30cmを超える魚、小型魚ながら身に血が回りやすいカワハギ、血液量が多い赤身魚は血抜きをすると特に良いです。
だだし赤身魚でも20cm未満のアジやイワシなど(白身魚とも思われがちですがアジやイワシは赤身魚)、血液量が少ないものは血抜きするより氷締めのほうが効率が良くなります。
氷締め
氷締めは小型のアジやサバ、イワシなど数釣れる魚に適した締め方。
海水で作った氷水(塩氷/潮氷)の中に魚を投入して締める方法。血抜きをしなくても食味に大きな影響はない小型魚が対象。釣り始める前に塩氷を準備しておき、よく冷えた中に魚を入れて瞬間的に締めます。
1時間ほどして魚が完全に冷えたらビニール袋に移し、その袋を塩氷の中に浸けます。これができない時は、納竿のときに水を捨てます。
魚全体が浸かるように、塩氷はたっぷり作ります。長時間浸けておくと、魚の体内に水が入り込むことがあるので注意が必要。
氷は釣具店やスーパーなどで購入するか、紙パックやプラスティック容器に水を入れて自宅の冷凍庫で作っておきます。ペットボトルに水を入れて凍らせておくと、溶けた真水で塩水の濃度が薄くならないので便利です。
サバ折り
サバやアジ、ヤズやメジカ(マルソウダ)などよく暴れる小型青物に適した締め方。
サバは非常に傷みやすく、「サバの生き腐れ」という言葉もあるほど。釣りたての鮮度を保つには、釣り上げたらすぐに首根っこを折って(できればエラと内臓をすべて取り出す)、海水を入れたバッカンなどで血抜き。そのうえで塩氷につけておきます。
体をしっかりつかんで、エラの下に人さし指と中指を入れる→首をグイッと折り曲げる。後は海水を入れたバッカンなどで血抜き。
神経締め
活け締めした魚の鼻やみけんから専用のワイヤーを通して神経を壊す方法。他の締め方と比べて技量も時間も必要ですが、魚をおいしい状態に保つには最高の方法。活け締めのみよりも死後硬直を先延ばしすることができます。
30cm以上の中型から大型魚で高い効果を発揮します。
鼻の穴からワイヤーを入れて神経締めをおこなう。ワイヤーがスムーズに入って、魚が「ビクビクッ」となったらOK。そこから尻尾の付け根まで一気に挿入し、ワイヤーを数回、手前から奥に動かす。魚体が白っぽくなったら神経絞めが完了。
うまくワイヤーが入らない場合は、尾の付け根部分を切って、背骨(青い円)の上にある脊髄(緑の円)にワイヤーを通しましょう。
持ち帰り方
活け締めをした魚の鮮度を保って持ち帰るにはクーラーが必須。そのときに注意したいのは、冷やしすぎないこと。OKとNGの例を写真で上げているので参考にしてください。
活け締めの直後は塩氷で急速に冷やしても良いですが、魚を塩氷に長時間浸けておくと締めたときにできた切れ目などから水分が体内に入り込み、身が水っぽくなってしまいます。魚を冷やしすぎると硬直も早まるので、死後硬直を遅らせるためにおこなった活け締めの効果が台無しになります。
持ち帰るときは魚に氷や冷たい水が直に当たらないように気をつけましょう。魚は厚めのビニール袋に入れて密閉し、水と空気を遮断。ただしある程度は冷やしておく必要があるので氷は入れておきます。もし氷が溶けてしまったら、帰る前にコンビニなどで購入して入れておきます。
魚だけをビニール袋に入れて新聞紙で軽く包み、その上から氷を入れておきます。水と空気をシャットアウトしながら冷やすことができます。
自宅と釣り場が近くてクーラー内の温度が上がらない場合は、塩氷の水を抜くだけでもOK!
塩氷に長時間浸けておいたりそのまま持ち帰ると、氷が溶けて塩分濃度が低くなり浸透圧の関係で魚のうま味成分が水に溶け出てしまいます。水を入れて凍らせたペットボトルを使うと避けられますが、冷やし過ぎもよくないので
氷なしで持ち帰るのはダメ。氷は多めに用意するか、帰る前に買い足そう。
あると便利な魚をおいしくいただくためのアイテム
釣った魚を生かしておくときは、バッカンとエアーポンプ、スカリを使う。活け締めをおこなうときは、ナイフやハサミ、手かぎを使う。締めた魚はクーラーに保管して持ち帰る。
◯バッカン+エアーポンプ
バッカンなどの容器に水を入れて、電池式のエアーポンプをセットすれば釣った魚を生かしておくことができる。飛び出し防止のためフタ付きがおすすめ。夏場は水温が上がると魚が弱って死ぬので、こまめな水換えが必要。
スカリ
釣った魚を生かしておくのに使う筒状の網袋。ロープをつないで海中に入れておけるので水換えなどの手間が不要。
ナイフ、ハサミ、ギャフ
フィッシングナイフ(左)/魚を締めるだけでなくラインを切ったり魚をさばいたりにも使える。写真はスライド式ナイフ。サビに強いフッ素加工を施したステンレス製。
ハサミ(中)/ナイフと同様に魚を締めることができる。エラやヒレのカット、下処理など幅広い用途に対応。
ハンドギャフ(手かぎ)/ハマチやマダイなど大きめの魚を迅速に締めることができる。釣り船の船長や魚市場などで使われるが、慣れないと扱いが難しい。
クーラー
釣った魚をおいしく食べるのに欠かせないクーラー。保冷力やサイズの異なるものが多数あるので、自分の用途(釣行時間や狙う魚の大きさ)にあったものを選ぼう。