四国西南部、高知県宿毛湾といえば、西日本有数のチヌ釣り場として知られている。黒潮の影響を受けるこの海域は、冬場も比較的温暖で、チヌのエサとなる貝類や甲殻類などが豊富。豊かな海に育まれたチヌは体高も厚みもあって筋肉質で、マッスルチヌと呼ばれる。破壊力抜群のパワーを備えたターゲットが潜むのは、浅くてシモリの多い独特の地形。フィールドの特性と相まって攻略のハードルは高くなるものの、ロクマルも有望なマッスルチヌとの駆け引きやファイトは、多くのチヌ釣師を虜にしている。
狙いは50㎝オーバー! 名手・大知昭とトーナメンター・山口美咲が宿毛湾の乗っ込みチヌに挑んだ。
フィールドの特徴と2人の戦略
大知さんと山口さんが釣行したのは、宿毛では桜が満開となった4月頭。当初、予定していた3月下旬は荒天に見舞われ、急きょスケジュールを変更して、2日間の日程でチヌを狙った。取材に協力いただいた西田渡船の船長によると、この2日間の前後も雨や強風の影響で上がれる磯が限定されるなど、とくに3月中は荒れる日が多かったという。黒潮の影響で冬場も水温が下がらなかったことがこれからのシーズンにどのような影響をおよぼすのか、例年とは違うパターンのなかでの実釣となった。
初日は6時30分頃に出船。めずらしく凪いでいる状況のなか、周辺の釣り場の状況を確認しつつ、「大島3番」へと渡った。ここも前述したように沖は砂地で水深は浅く、周囲にはシモリが点在する宿毛湾らしい地形。磯の上から地形や流れを確認して戦略を練る。
大知さんと山口さんが手にしたロッドは、シマノ『鱗海マスターチューン』。チヌフカセ師の求める理想をカタチにした同シリーズは、細かな号数設定でそれぞれに個性が際立つ調子、セッティングが特徴。
シモリの多い宿毛湾の地形を考慮し、大物に狙いを定める大知さんは、シリーズ最強のパワーモデルである1.2-530を選択。一方の山口さんは自身の体力なども考慮し、操作性と食い込み性能、チヌを暴れさせないやり取りを想定して0.4-530をチョイス。道糸も大知さんのPEに対して、山口さんはナイロンという対照的なスタイルで実釣スタートとなった。
大知 昭さんの仕掛け
山口美咲さんの仕掛け
強風に悩まされながらも本命を攻略
「大島3番」で釣りを開始してほどなく、アタリをとらえた山口さんが小型のグレをキャッチ。
「エサ盗りが出てきましたね」という言葉通り、イソベラやフグ、カサゴなどが竿を曲げる状況が続いた。それでも、開始40分が経過した頃、潮も高くなり、マキエも効いてきたタイミングで、アワセを入れた大知さんの『鱗海マスターチューン』が美しい弧を描いた。主導権を与えることなく玉網に収めたのは42㎝クラスのチヌだった。
連発とはいかないものの、次第に風が強くなるなかでアワセを入れたのはまたしても大知さん。そして、大知さんがやり取りしている最中に、今度は山口さんも気持ちよく竿を曲げてダブルヒット! 大知さんは練りエサ、山口さんはオキアミをサシエにして、2人とも45㎝クラスを手にした。
さらに風が強まる中で、山口さんが2匹目の良型チヌを釣り上げたものの状況は厳しく、船長と相談して風の影響の少ない場所へ移動することになった。
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