念願のシマノ ジャパンカップ クロダイ全国大会優勝! 百合野崇さんインタビュー

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2019年3月に開催された『2018 シマノ ジャパンカップ クロダイ(チヌ)釣り選手権大会全国大会』で頂点に立った百合野崇さん。前身の鱗海カップから10年追い求めてきた栄冠を手にした気持ちや試合の模様を語ってもらった。

百合野崇(ゆりの たかし)
下関在住。東は広島、西は長崎県北とチヌを追って広く釣行。シマノ磯フィールドテスター、マルキユーフィールドスタッフ、金龍鉤スペシャルスタッフ

聞き手/編集部

ーー ジャパンカップクロダイ(以下:JCクロダイ)優勝おめでとうございます!

ありがとうございます!

ーー 率直な感想をお聞かせください。

鱗海カップ(JCクロダイ以前のシマノ主催のチヌ釣り競技大会)を含めてシマノのチヌ釣り競技大会へ参加して10年になるのですが、やっと結果が出せたことと、協力してくださった周囲のみなさんへよい報告ができてよかったと……。正直いって、まだまだ実感がないんですよ。

ーー JCクロダイは何度目の挑戦だったんですか?

予選には第1回からエントリーしていました。決勝(全国大会)まで行けたのは第3回の大分鶴見のときですね。そこからも毎年予選にエントリーしていましたが、決勝までいけなくて、6年ごしでやっと抜けれた! という感じでした。

ジャパンカップ集合写真
6年越しで2度目の全国大会への進出だった

ーー この大会へ臨むにあたり、なにか注意していたことはありますか?

特にないんです。ただ九十九島はホームグラウンドのひとつなので、大会本番までに通えて感触を得られたことはやはり大きかったと思います。それだけに試合で釣果を出さないといけないなという想いもありました。

ーー 第3回のときと今回では違ったことってありますか?

一番は精神的なものですね。落ち着きがあったというのか、第3回に出場したときは緊張のあまり、どうやって釣りしていたのかも思い出せないんです。で、全戦ボウズという結果で終わりました。かなりうわついていたことだけ印象にあります。今回はそれがなかったですね。

ーー それはホームグラウンドというのもあったからでしょうか?

そうですね。あとはJCが九十九島へ会場を移してから役員で参加させてもらっていたので、大会の進行状況や雰囲気というのが分かっていたのもありますね。それと自分も年齢を重ねているので、相応というかうわつきにくくはなくなってますよね(笑)。

ーー 百合野さんの師匠である大知昭さんも「精神面は大切だ」と言われていました。釣りに関してはいかがですか?

道糸にPEを取り入れたことがこれまでとは違いますね。取り入れてから1年半になるのですが、やっぱりナイロンとは感触が違うんですよ。PEでの釣りになじんで自分なりの感覚が身に付いてきていたというのがありますね。

ーー なるほどですね。では初日についてお教えください。

遊びの釣りでもかなり通った九十九島なのに2試合ともまったく知らない場所でした。でも九十九島は1本半から2本のタナでじっくり釣ると釣果を得やすいという経験があるので、そこを頼りに釣りを展開することにしました。潮位が高いうちは浅いところを攻めて、下がってきたら深場をという組み立てもありましたね。あとは小ダイのヒットがこのエリアではチヌへのバロメーターと私は考えていて、それがうまくハマってくれました。ちなみに、この大会で私はJCクロダイ初のチヌを手にできました。

ーー 第3回は全戦ボウズでしたもんね。あの、小ダイってエサ盗りのですか?

そうです。これが釣れたら、そのあとにチヌもわりと早く食ってるんです。潮が動いているんでしょうね。試合でもこのパターンは多くて、確信して狙っていけました。ミスもありましたけどね。

ーー どんなミスですか?

1試合目なんですが、海面が濃くなっているのが落ち込みだと思ってたんですよ。「あそこは潮位が下がってから残しておこう」と思ったら実は藻場で……。もともとかなり浅い場所だったんですよ。しかも大潮で干満の潮位差が大きかったのもあって潮が引くのが早かった。

ーー つまり狙う順番が逆に?

そうですね。でもその藻際にチヌがいることが分かったので狙って釣ることができました。そのあたりのリカバーも第3回のときとは違いますよね。あの当時だったら組み立てが崩れた段階で「もう今大会終わった……」とか考えていたでしょうね。

ーー チヌがいると分かったのはなぜですか?

藻際に仕掛けを入れて狙うと、アタリがあってハリをかみつぶされたんですよ。こんなことはチヌ意外にはありえないだろうと。

ーー なるほどですね。そういえば師匠にあたる大知さんも「今回の百合野くんは攻めの姿勢だった」と言われていました

1匹を釣ったあと、気持ちを切らさないで2匹目を追えましたね。でも攻めの気持ちというか、必死というほうが正解ですね。

ーー 初日が終わって2勝。重量差でもトップの暫定1位でしたが、手応えとしては?

勝てた、釣れたという感触はあるんですが、1位というのは結果表を見てビックリしました。でもチヌ釣りトーナメントの怖いところはサイズが読めないので1匹で試合をひっくり返されることがあること。だからこの結果に満足とか、うれしいという感覚はなかったですね。2勝で並んでいた選手はほかに5名いましたし。明日もがんばろうと思っていました。対戦相手はチヌ、グレともに全国大会上位常連の生駒浩史選手でしたしね。

ーー その命運を分ける3試合目はいかがでしたか?

この試合も初めての場所でした。優先権がなかったのですが、いい潮目が出ているほうの釣り座に生駒選手が入られました。「やっぱりそっち(選ぶ)だよなぁ」と思っていたら、試合開始早々にそこでチヌを釣られて、さすがトップトーナメンターだなと。これはがんばらねばと気合も入りました。

ーー 結果は百合野さんが勝利でしたね

これは本当に結果的にですね。あとで知った話なんですが、私が入った釣り座のほうがこの磯の本命ポイントだったんです。だから底潮が動いたときにサイズのよいチヌが出てくれました。生駒選手の最初の釣り座は根掛かりが多い場所で、交替したあとに私も根掛かりをしましたし魚も出なかった。逆に生駒選手は本命ポイントに入ってからはすさまじい追い上げを見せられました。これがトップの方の底力なんだとまざまざ感じました。釣り座に入ったのが逆だったらどうだったか……。あと、サイズが読めなかったので検量しないと分からないな……という感じでしたね。勝てたのは釣り座回りとサイズがよかったからです。

ーー なるほど。こうして決勝の相手は横路幸浩選手に決まりました

私が競技の釣りへ参加するころから、横路選手は常に結果を残されている方だったので、一方的に知っていたんです。そんな方と決勝で試合ができるなんて……と感無量でした。釣り、試合の経験値、大きな舞台で試合をする場慣れも横路選手が圧倒的に上ですから、胸を借りるつもりで思い切りやろうと決めました。

ーー 決勝はどんな感じでしたか?

思ったより風がありましたが、遠投で勝負しようと思いましたね。プレッシャーもあったのでこれまでだと迷いの釣りになっていたことも多いんですが、この試合はとにかく遠投で通すことにして、結果が出せました。潮下に入れたのもよかったですね。横路選手のマキエの恩恵を計算しながらこちらも狙う距離を絞れたので。

ジャパンカップ決勝戦
決勝戦で竿を曲げる百合野さん
百合野崇 シマノジャパンカップ チヌ持ち

ーー 1匹釣ってリードできて優勝という文字は浮かびましたか?

それはないですね。それよりもチヌを釣らないと! というので必死でした。チヌは1匹サイズのよいのが出ると重量差でひっくり返されますし、そもそも風があったのと、横路選手の釣り座は私の立ち位置からチラっとくらいでは見えないので、釣られているかどうかもよく分からなかったんですよ。

選手が釣ると観客のみなさんが拍手してくださるんですが、なかったよな? 風で聞こえてないのかな? それとも自分が聞き逃しただけなのかな? とかちらっと考えはしましたが……。

ーー 試合が終わって優勝の確信は?

これもないです(笑)。

やっと終わった~って、燃え尽き状態で帰りの船に乗り込んで、釣果の話を聞いたんですが、「ああ~、勝ったんだな」とは思いましたが、なんだか自分のことではないようで……。帰港までにどういう話をしたかもよく覚えてないんです。とにかく燃え尽きてました。

ーー 優勝のコール、表彰台の景色はいかがでしたか?

なにもかも、ふわふわしてました。ここではうわついてましたね(笑)。気づいたらシャンパンかけてるとか。

ただ大知師匠が泣くのをこらえているのが表彰台から見えたので、私も泣きそうになりました。さすがにそれはガマンしましたけど。

ジャパンカップ シャンパンシャワー

ーー 師匠・大知さんへの想いは強かったですか?

そうですね。師匠に面倒を見てもらうようになって、かなり長いのですが、ご指導いただいているのになかなか結果を出せず、心配もさせました。だから目の前で結果を出せたというのはうれしかったですね。月並みな言葉ですが、やっと恩返しできました。

ーー よく優勝するといろんな人の顔が浮かぶと言われますが、いかがでしたか?

そう、家族も含めて協力してくださったみなさんの顔が走馬灯のように浮かびました。ああ、これが話に聞く「あれ」かと(笑)。

あとは大知門下生の先輩にあたる、猿屋茂雄さんの顔が強く浮かびました。一緒にこの大会に出場しましたが、それまでに情報交換をしたり、一緒に九十九島で竿出ししてくださったので。

ーー 来年はチャンピオンとして大会を迎えますが、意気込みはいかがですか?

この質問、よく聞かれるんですよ(笑)。でも本当にそういう実感がないので、一選手として、今大会と同じように1匹をどん欲に狙っていきたいですね。それで結果が出すことができればうれしいです。

決勝戦で使用したタックル

百合野タックル

師匠である大知昭さんのコメント

精神力と技術の両方がそろった見事な優勝だった

優勝おめでとうございます! 

ですね。

会場の九十九島は彼のホームグランドのひとつなのでその優位性はあったと思いますが、私が今大会を通じて感じたのは「精神力」の強さ。技術には問題ないので、この精神力が今回優勝できた最大の要因でしょう。彼を長年見て来た、釣り仲間の1人としてもこの成長は非常にうれしく感じています。

予選3試合の釣果を見ると、トータルでただ1人、3試合で10㎏超えをマークしています。場所がよかった、潮がついた、釣り座回りがよかったなどの条件はもちろんありますが、時間内に自分の釣りできっちり釣ったからこそ。技術力の高さと精神力の高さ両方がそろっていないとこういうことはなし得ないですからね。

実は以前までの百合野くんは、闘争心というものがあまり表に見えなかったんです。これはよくも悪くも彼の持ち味、個性なのですが、やはり勝負というのは「勝ち」にこだわらないと勝つことはできないものだと思っています。

勝ちへのこだわりがもともと弱いのかなと感じていました。

だからこれまで何度かチヌフカセの全国大会にも出場しているのですが、そこの部分でほかの選手に競り負ける場面が多かったように感じます。

今回は試合を見学させてもらいましたが、1試合目から印象が違いました。これまでだと1匹目を釣ったあと、少し余裕を持ってしまい、追いつかれてしまう「逆転負け」が多かったのですが、脇目もふらず2匹目をどん欲に追いかけていました。

先行逃げ切りではない、とにかく釣ることを目的にする。相手の動きは気にしつつもプレッシャーには感じないで自分の釣りをしっかりする。それが釣果の差にも出ましたね。

私も選手として、何度も全国大会には参戦しましたが、その経験からいくと、ジャパンカップのようなリーグ戦では1試合目の勝利内容が大切なんです。

どう勝つかで大きく違います。渋いなか1匹を競ったのか? 釣り合いを制したのか? 相手のミスで勝てたのか? 負けてると思ったら実は検量で勝ったなど、2試合目で対戦する相手にもどう勝ってきた相手なのかというのはプレッシャーを与えることができますし、納得いく勝利は自分を奮い立たせてくれますのでね。

また今回の釣果の秘訣はおそらく「練りエサ」での釣りを通したことでしょう。練りエサはやはりサイズを呼んでくれるものだと自身の経験から確信していますし、彼もそれを今回は通そうという強い意思があったんだと思います。迷いなくやっていた。ここも違いましたね。

実は決勝戦で先制したあとが初舞台だけにちょっと心配でしたが、手を止めることなく釣りに没頭して2匹目を手にして相手に差をつけ、プレッシャーを与えていました。それを見てもう心配は無用だなと。今回は本当に堂々の優勝といえるでしょう。

来年はチャンピオンとしての出場になるので、今大会の経験が彼をどう戦わせるのか、非常に楽しみですね。

百合野さんと大知昭
師匠の大知昭さん(左)と

大知昭(おおち あきら)
シマノ磯アドバイザーほか、多数のメーカーよりサポートを受ける。練りエサでの遠投釣法を得意とするチヌ釣り名手

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