四国西南部にある宿毛湾(高知県宿毛市)は大型チヌが釣れる人気エリア。チヌ釣り師憧れの60㎝オーバーの巨チヌ(通称ロクマル)の実績があり、県外からも多くの釣り師が訪れている。
3月12日、そんな宿毛湾で大型チヌを狙ったのは「かかり釣り」の名手 正木義則さんと山本孝義さん。季節の変わり目で食い渋る中、55㎝を頭に大型チヌを釣り上げた。
宿毛湾でのエサとタックル
宿毛市小筑紫の「岡崎貸船センター」から正木さんの操船で向かったのは内外ノ浦エリア。奥まった湾の中に魚の養殖イケスが多く並んでいるチヌの実績が高い場所。前日にも竿を出した正木さんたち。何箇所か移動しながら釣ったところ、ここがアタリが多かったそうだ。54.5センチの大型チヌも釣れたとのことで期待できそう。
ポイントに到着したらまずはダンゴ作り。
かかり釣りに最適な大容量のバッカン『ワイドパワーバッカン02』(マルキユー)に『赤だんごチヌ』や『激重ペレット』などの配合エサを混ぜ合わせていく。ここのような養殖筏が多いエリアでは、養殖用ペレット成分を大量に配合した『激重ペレット』が欠かせないそうだ。
正木さんが使用した配合エサ
正木さんのダンゴは『赤だんごチヌ』をベースに、『激重ペレット』『濁りオカラ』『紀州マッハ 攻め深場』をブレンド(すべてマルキユー)。
山本さんが使用した配合エサ
山本さんのダンゴは『パワーダンゴチヌ』をベースに、『激重ペレット』『濁りオカラ』『コーンダンゴチヌ』をブレンド(すべてマルキユー)。
最初に、いくつかダンゴを沈めておいてタックルの準備に取り掛かる。
マルキユーの大容量ロッドケース『イカダロッドケースTR-01』から取り出したのは、竿『カセ筏師 THE アスリート SAMURAI MM BB4』と新しいリール『カセ筏師グランドラガー65』。
このリールはこれまでのかかり釣り用リールと違い、ドラグ逆転時にハンドルが回転しない「ノンシンクロドラグ機構」を搭載したリールだ。
「ハンドルを持っていてもドラグが出るので、かかり釣り初心者の人でもバラシが減りますよ。この釣りはチヌ以外の大物がヒットすることもあるので、そんなふいの大物にも対応できます」と正木さん。
アタリを見極める釣りでチヌをキャッチ
釣りスタート。正木さんがダンゴを沈めると、1投目からダンゴをつつくダンゴアタリ! ダンゴが割れてからもコツコツと穂先に小さなアタリが出ているが正木さんはアワセを入れない。
いつもはわずかなアタリを捉えてチヌをヒットさせることも多いのだが、この日は仕掛けを再投入しても、同じく小さいアタリでアワセないまま。
そして数投後、コツコツと上下動を繰り返していた穂先が小さくスーッと抑え込まれたところで全身を使ってアワセを入れて竿を曲げた。パワフルな引きをみせたのはチヌだった!
正木さんは前日にも宿毛湾で釣りをしていた。前日は早いタイミングで出るアタリはボラやヘダイで、チヌはそれらが散った後に寄ってきていた。
チヌが食う前にボラを掛けて走らせてしまうと、集まりかけていたチヌが散ってしまう。この日も、最初はボラのアタリ(ツケエを食っても離すので曲がった穂先が戻る)が多かったのでアワセを入れず、長く抑え込んだままになるチヌのアタリを見極めてチヌを掛けたのだ。
正木さんはいつも以上にアタリを見極め、チヌのアタリが出るまで待つ釣りを徹底していた。
しばらくするとヘダイがヒットしはじめた。特にヘダイが掛かることが多かった山本さんは、何匹か掛けた後に正木さんと同様に食い込むのを待つ釣りに変更。
すると釣り方を切り替えたところで竿が大きく曲がるヒット。パワフルな引きを見せたのは53㎝の大型チヌだった!
かかり釣りは繊細な穂先で小さなアタリを捉えて掛けるイメージがあるが、正木さんによると状況によって穂先が引き込まれるまで待つことも多いとのこと。状況を見極めて対応することが釣果を上げる重要なポイントだ。
しばらくするとダンゴを沈めた直後のアタリが減ってきた。
ここで正木さんは、タングステンシンカー(8g)をセットしたタックルで、ツケエ(ボケやカメジャコ)をダンゴに包まずに投げる広角釣法で周辺を狙いはじめた。
どちらもチヌやエサ盗りが好きなエサだが、アタリが出ずにそのまま残ってくる。しかし、正木さんは投入地点を変えながら探ってチヌをヒットさせた。その後、さらに広角釣法でチヌを1匹追加。
「今はダンゴの濁りの中にチヌだけでなくボラも入ってこない。潮などによってこんな時間もある。ただダンゴから少し離れた所で流れてくるエサを拾っていたりするから、広角釣法で狙ってみた。また潮が動くなどしたら、ダンゴに(ツケエを)包んだ方がよくなるよ」
正木さんはその日、その時の状況に合わせて狙い方を変えていく。
「同じことをしていても(結果は)同じ」という考え方からだ。
その後、広角釣法から再びダンゴにした時には置き竿にしてアタリを待つこともあった。正木さんにしては珍しいシーンだが、手で竿を持っているとアタリが止まるような厳しい時は置き竿でアタリを待つこともあるそう。時には10分ぐらい置き竿にすることもあると聞き、攻め方の幅の広さに驚かされた。
午後になってボラやエサ盗りの活性が少しずつ上がってきた。ここで正木さんはダンゴを底より上で割って、ツケエをゆっくり沈ませる「宙切り」を試す。
すると、沈むツケエにヒット。アワセと同時に力強く走る引きの強さに「ボラ?」とも思われたが、上がってきたのは50㎝の体高のあるきれいなチヌだった。
「底より上にいた。中層でエサを拾っているチヌは元気があるね」
狙いの切り替えで釣り上げた見事な1匹だった。
正木さんの左側で釣る山本さんは、小さなアタリは正木さんよりも多かった。これは下潮が山本さん側に流れていて、割れたダンゴが山本さん側にゆっくり流れていたため。チヌ以外のヘダイなども多く寄っていたからだ。
序盤に早アワセを止めた山本さんも、アタリが続いてもアワセずに食い込みを待つスタイルを徹底。
「アワせてないアタリの中には、チヌがもう食い込んでいるものもあると思うんですが、今日は穂先を持ち込むアタリまで待ちます」と山本さん。
その直後、穂先にしっかり出たアタリをアワセて52㎝のチヌを釣り上げ、狙い方が間違ってないことを証明した。
食い込みを待つ釣りで大型チヌをキャッチ
もうすぐ納竿。そんな時に正木さんが小さなアタリを捉えた。横から見ると、これまでのエサ盗りの小さなアタリのように思えたが、正木さんは竿を手に集中してアワセのタイミングを待っている。
後から教えてくれたのだが、正木さんはこの時、小さいアタリだが穂先が戻らずにわずかに抑え込まれたままなのを見極めて「チヌのアタリ」と確信していた。
そして、ツケエを食い込むまでじっと待って、さらに抑え込んだ時に全身でアワセを入れた。
アワセるとこれまで以上に大きく竿を曲げる重量感のある引き。さらに絞り込まれるとドラグがラインをだす。そして、チヌの引きが弱ったところでドラグを少し締めて一気に浮かせてきた。
手にしたのはこの日の最長寸となる55㎝の大型チヌだった!
予想以上に食い渋った状況だったが、2人とも50㎝オーバーのチヌを釣り上げる大満足の釣行となった。
正木さんたちの仕掛けやタックルは次ページで詳しく紹介します。