気の向くままに浜辺を歩いて、風情のある流木や、宝石のように美しい石ころと偶然出会う。本との出会いもまた、楽しい偶然の連続。これまで編集部スタッフが読んだ本のなかから、新旧やジャンルを問わず紹介します。
寄生蟲図鑑 ふしぎな世界の住人たち(監修/目黒寄生虫館 大谷智通 著、佐藤大介 絵、講談社 2018年1月初版発行
2022年11月、顎口虫(がっこうちゅう)という寄生虫の感染者が相次ぐというニュースを目にしました。シラウオの生食が原因ではないかと言われ、患者さんの赤く腫れた皮膚が脳裏に焼き付いています。
今回ご紹介する『増補版 寄生蟲図鑑』では、読者のみなさんも目にしたことがあるかもしれない、魚に付く寄生虫イカリムシやタイノエ、アニサキスのほか、 「日本が世界で唯一克服した“血の中に住む”寄生虫」日本住血吸虫、「足から出てくる長い“ヒモ”」メジナ虫、「脳を食らう殺人アメーバ」フォーラーネグレリア…身の毛もよだつ「人類の強敵」が次々と出てきます。
ヒトや動物に巧妙な手口で侵入するしたたかさ、宿主を操り、まんまと繁殖する子孫繁栄術…微細な虫とは思えないほど実に狡猾です。しかも、いまだその正体が明らかにされていないものも含めると、地球上には計り知れない種類の寄生虫がいるそうです。実はこの本、目黒寄生虫館のベストセラーとのことで、怖いもの見たさの多くのヒトが寄生虫にコントロールされているのかもしれませんね。
さて、ほかにもう2冊、『ばす』『あたり 魚信』という小説(どちらも著者は山本甲士)をご紹介します。いくつかの章から構成され、ときおりモヤモヤする場面もありますが、怒とうの最終話でスッキリしますよ。
アフリカにょろり旅(著者/青山潤、講談社、2007年発行)
黒潮大蛇行が続いているらしい。
NHKのTV番組「ギョギョッとさかな★スター」でも、さかなクンが言っていました。
黒潮が蛇行すると何が困るのか。番組では、はるか南方の沖ノ鳥島付近でマアナゴが産卵する→孵化したマアナゴの幼生「レプトセファルス」が海流に乗って日本に近づく→黒潮が従来よりも日本沿岸から離れたコースを流れる→稚魚が日本にたどり着けず漁獲量が激減。ということだそうです。
マアナゴ以外にも多くの仔魚が黒潮に乗って運ばれているでしょうから、日本をとりまく水産資源への影響はいかばかりかと……。
と、いきなり話が本から大蛇行してしまいました。今回ご紹介するのはニホンウナギの話。長い間謎だったニホンウナギの産卵場所を突き止めた海洋生物学者、塚本勝巳先生率いる東京大学海洋研究所。通称ウナギグループが、世界18種類のうち未採集のウナギ「ラビアータ」を探してアフリカを奔走します。
英語が通じない。交通手段が少ない。伝染病の危険。劣悪な衛生状態の宿泊所。ワニ、カバ、泥棒……過酷な条件のなか、ラビアータ捕獲への執念を燃やす、若き研究者の痛快冒険記です。第23回講談社エッセイ賞受賞作。
続編に『うなドン 南の楽園にょろり旅』『にょろり旅・ザ・ファイナル 新種ウナギ発見へ、ロートル特殊部隊疾走す!』。
『うなぎ丸の航海』(阿井渉介/講談社文庫)では、マリアナ諸島近海でウナギを釣り上げるべく、1kg超のオモリを付けた仕掛けで竿をシャクる青山先生も紹介されています。