2021年にモデルチェンジして登場したシマノのチヌ竿『鱗海(りんかい)スペシャル』。長年、鱗海シリーズの開発に携わってきた大知昭さん(シマノアドバイザー)が、「これまでのモデルとは根本的な設計から異なる竿」というほどの大きな進化を見せた鱗海スペシャルについて紹介します。
鱗海スペシャルとは
大知昭/使って楽しく、気持ちよくチヌを釣るための理想の竿と考えています。シマノには『リンカイアートレータ』や『極翔硬調黒鯛』といったチヌフカセロッドがありますが、それらとは考え方がまったく違います。スペシャルには00号という独自のラインナップがあるのですが、それも『楽しさ、気持ちよさ』を追求してのものなんです。(以下、この色は大知昭さんの言葉です)
大知さんの考える「チヌ釣りを気持ちよく楽しめる」のは、魚の大きさや引きに応じてきれいに曲がりつつ、曲がった状態から魚を浮かせる粘り強さを持つ竿。『鱗海スペシャル』はシマノの磯竿の中でそれをもっとも味わえる竿とのこと。
「竿が軟らかいと操作性が鈍くなるとか、胴調子のチヌ竿はダルい感じがするというのは昔の話。『鱗海』シリーズはそれを払拭してきました。シャキッとしているのに胴調子ですから、不思議ですよね。でもシマノの技術力はそれを実現します。毎回、もうこれ以上はないだろうと思っていても、それをあっさり超えてくるんです。2021年の鱗海スペシャルも想像以上の仕上がりです」
鱗海スペシャル スペック
大知昭が感じた《各号数の特徴》
00号 | 鱗海シリーズでもっとも楽しいといえる1本です。こんな細さと軽さでチヌと闘える不思議さと楽しさを味わってほしいですね。パワーをしっかり持たせてあるので、オープンエリアで良型のチヌと闘ってみてください。 |
0号 | 鱗海シリーズの象徴といえる号数。オープンエリアならどこでも使える1本です。0号竿はどうも……という人にも使ってみてほしいです。遠投性、操作性、フ ァイト時の感覚が変わると思います。 |
06号 | ラインナップ中で「誰でも使える1本は?」と言われたらこれ。鱗海の基本ともいえるバランスで、少々大きなチヌがきても問題なし。これまで1号竿を愛用している人には、ぜひ使ってみてほしい1本です。 |
1号 | これまでの1号のチヌ竿とは思えないパワーです。そのぶん使い勝手がいいので、オールマイティーですね。競技の釣りでも活躍してくれます。トーナメンターにもおすすめの1本です。 |
1.2号 | アートレータにも1.2号はありますが、これは広々とした外洋で大きなチヌを泳がせながらファイトを楽しんで獲る竿です。パワー重視のモデルですが、楽しさを追求したバランスのよい竿です。 |
名手を驚かせた鱗海スペシャルの特徴を紹介していきます。
鱗海スペシャルの特徴
ブランクスは「スパイラルX」から「スパイラルXコア」へ。カラーはマットブラックから光沢のあるブラックを基調にゴールドの装飾へと変更。
鱗海スペシャルの2021年モデル(以下 21鱗海スペシャル)は、2016年モデルを含めてこれまでとは根本的な設計が異なっています。大知さんが最初にプロトタイプを手にした時に驚いたのが、5本継ぎの5.3mのスペックは同じでも竿の各節の長さが異なっていた点。
「胴元と4番(胴元の上)を少し長くして、1番(穂先)を短くして5.3mにしています。これじゃ穂先が短いし、太くて硬いからアタリがとりにくかったり、食い込みが悪くなったりするんじゃないかと思いました。ところが、まったく問題なしでした」
竿尻を合わせた状態で比べると2021年モデルの方が長い(4番も同程度の差)。仕舞寸法は5.3mの場合で2016年モデルが114.3cmに対して2021年モデルは116.1cmと少し長くなっています。
穂先が前モデルよりも短く太くなったのに、鱗海らしい、しなやかな穂先がまったく損なわれていなかったのは、「『タフテック∞』(※1)と『Xガイド』(※2)8個との組み合わせのおかげ」とのこと。
「『タフテック∞』は『タフテックα』よりもさらに柔軟で強い。だから短く太くしてもしなやかさが損なわれないんです。そして『Xガイド』を2個増やして、穂先から2番上部までがすべて『Xガイド』。ここはもっとも動く部分なんですよ。短く軽く、しなやかなので穂先がこれまで以上に軽く感じられるし、繊細に動きます。穂先が短くなったという違和感はすぐ消えましたね」
伝統の白い穂先は健在。「タフテックα」の上をいくしなやかさを持つ「タフテック∞」へ。これにより、短くなってもこれまでのしなやかさを持たせたまま操作性を向上させています。
「X ガイド」を2個増加して8個にすることで1番から2番までがすべて「X ガイド」に(2016年モデルはXガイドが6個)。「それだけでより繊細な穂先になったよ」と大知さん。トップのカラーはゴールドに変更。
※1 タフテック∞=穂先部分に採用されているテクノロジー。シマノの従来のソリッドに対して巻き込み強度3倍、巻き込み量5倍を実現。強い「タフテックα」をさらにしのぐ高強度ソリッド。さらなる折れにくさとしなやかさを併せ持つ
※2 Xガイド=シマノオリジナルガイド。小型、軽量を徹底追求。ブランクスとの段差をなくした一体成形で糸絡みを激減させる。穂先に採用することで竿全体の軽量化を図り、操作性の向上と、優れた振り抜け感、鋭敏なライン追従性も実現
リールシートは前モデルより少しだけ上(穂先側)に設定。リールシートから竿尻までを長くすることで操作性が向
上。
「小さな変化ですが、大きな進化ですよ。これまで『鱗海スペシャル』を使い込んできた人なら、その違いを感じられるでしょう」
美しい曲がりと粘り強さが特徴
「各節の長さが変わったから、魚を掛けたときの感触もこれまでと違うものになっているかも? と思ったのですが、鱗海らしい美しい竿曲がりは健在でした。穂先からきれいに曲がりながら胴元へ重さが乗ってきます。アワせたときの曲がり方と、魚の重さを胴へ乗せ切ったときの感触は、『気持ちいい!』ですね!」
これは今モデルから搭載となった「パラボラチューンR+」(※3)によるものとのこと。
「(パラボラチューンR+は)『リンカイアートレータ』と『極翔硬調黒鯛』にも搭載されています。これが『鱗海スペシャル』に使われたらもっときれいな曲がりになるだろうと思っていたんですが、想像の上をいきました。すべての号数でですが、特に『鱗海スペシャル』独自の『00号』でその真価に気づきます」
アワセを入れてチヌの重みが『鱗海スペシャル06号530』に乗ったところ。きれいに弧を描きながら、胴にはまだ余裕がある
大知さんは竿をここまで立てて、竿全体のパワーを使ってやり取りする。鱗海スペシャルは4番、3番まできれいに曲がってチヌの力を削いで浮かせてきた。これが「竿が仕事をする状態」とのこと。
魚を浮かせるパワーについては、
「前モデルも『スパイラルX』のパワーがチヌをスッと浮かせてくれましたが、『スパイラルXコア』(※4)でさらにパワーアップしました。山口県上関沖で06号で55㎝のチヌを掛けたんですが、思った以上にすんなり浮かせることができたんですよ。正直掛けたときはそんなに大きな魚とは思わなかったから驚きました」
大知さんによると、前モデルの1号を愛用していた人は、今モデルは06号でこれまで以上の釣りができるそう。
「号数が小さい方が竿が細くなるし、若干だけど軽くなります。そうなると長時間釣ったときの疲労感が全然違うんですよ。集中力を保って手返しよく釣れるから楽しいし、釣果アップにもつながります」
根に走ろうとするチヌを止めようとタメるとチヌがスーッと浮いてきた。「新しい鱗海スペシャルなら0号でも取り込めたと思う」と大知さん
美しい曲がりと粘り強さはやり取りだけでなく、遠投力アップにもつながるとのこと。ここで少しだけ上に位置させたリールシートも活きてくるという。
「2cmくらいの差なんですが、フルキャストするときに振り込みやすいんですよ。たった2㎝くらいでこんなに変わるんですからね。竿って難しいし、奥深いなと思いますよ」
06号で遠投する大知さん。「新設計でグッと振り込みやすくなりました。20gクラスのウキも楽々です」
※3 パラボラチューンR+=竿の継部に採用されているテクノロジー。各節の重なりをブランクス2層分から1層分プラスαにまで調整して、ワンピースロッドに匹敵する美しい曲がりを実現する「パラボラチューンR」の構造と設計を見直し、さらなるバットパワーと粘りを向上させた新しい技術
※4 スパイラルXコア=ブランクスに採用されているテクノロジー。曲げ、ネジレ、つぶれ、あらゆる方向に対してさらなる高強度化を徹底追求したシマノ独自の設計・製造方法の「スパイラルX」に高強度材を組み合わせ、ネジリ強度10%アップ、つぶれ強度15%アップを実現