フカセ釣りに欠かすことのできない「マキエシャク」。しかし、釣具店に行くと長さやカップ形状・素材の異なるマキエシャクがたくさん並んでいて、どれを選べがいいのか悩んでしまう。今回は「かめや釣具総本店」店長の牧原洋海さんにチヌのフカセ釣りのマキエシャクの選び方を教えてもらった。
マキエシャクを選ぶ4項目
店内にはマキエシャクコーナーがあり、たくさんのマキエシャクが並んでいた。全長30㎝ほどの短いものから、80㎝ほどの長いものもある。価格もさまざまで、千円前後のものから1万円を超えるものまである。
「釣り人さんごとに使いやすいものを選んでもらうためのラインナップですね。チヌフカセに使うといっても、どんな場所でどう釣るのか、また釣り人の身体の大きさなどでもおすすめするマキエシャクが変わってきます」
今回は、これからチヌのフカセ釣りを始める人向けという条件でマキエシャクの種類や選び方を紹介してもらうことにした。
牧原さんによると、まず選ぶ際にチェックするのは「長さ」「カップ」「シャフトの硬さ」「価格」の4項目とのこと。それぞれについて説明してもらった。
マキエシャクの長さ/70cmがおすすめ
「磯や波止で釣るのであれば足元から沖まで狙うので、70cmのマキエシャクをおすすめしています。もっと長い75〜80cmのマキエシャクは遠投には向いていますが、マキエシャクの扱いに慣れてから使うほうがよいでしょう。そうすると長さのメリットが感じられると思います」
チヌフカセ釣りは、状況に応じて手前から遠投まで幅広いポイントを狙う。まず汎用性の高い70cmのマキエシャクでマキエワークの基本を覚えるのがおすすめとのこと。70cmのマキエシャクだと、バッカンからマキエをすくいやすいそうだ。
ただ、釣り人さんの身体の大きさに合わせて提案することもある。
「長身の方が70㎝を使うと、バッカンからマキエをすくうときに身体を曲げる必要があります。これを1日中、繰り返すのはしんどいところもあります。そんなときは長めの75〜80cmのマキエシャクの方が使いやすくなりますね」
このような例外はあるものの、それでも投げやすさなどを考慮すると、最初の1本は70cmがスタンダードといえる。
では、このような30〜50㎝の短いシャクはどんな時に使うとよいのか?
「これをチヌフカセで使う場合は、イカダや波止でクーラーに座ってじっくり近距離を釣るときですね。座った状態でバッカンからマキエをすくって投げやすいですよ」
たしかに座った状態で70㎝クラスのマキエシャクでマキエをすくって投げるのはちょっと難しい。釣り方によっては短いマキエシャクが良い場合もあるのだ。
カップ/材質と大きさ
カップには材質と大きさに種類がある。
カップの主な材質は ①プラスチック、②ステンレス、③チタン の3種類。
カップの大きさは基本的に S、M、L の3種類(Sより小さいサイズ、Lより大きいサイズもある)。
まずは材質について牧原さんに教えてもらった。
カップの材質について
①プラスチック/プラスチック。軽量だがマキエ離れは他の2種類と比べると悪い。軽量なのでしっかり振るスタイルで使われている
②ステンレスカップ/自重はあるものの、マキエ離れがかなりよい
③チタンカップ/軽くてマキエ離れもいいが、価格が高い
「カップ材質の3つを比べると、
①は軽いけれど、②、③よりマキエ離れが悪い。
②はマキエ離れはいいけれど重い。
③は軽くて、マキエ離れもよい。
この特徴からすると③のチタンのカップが一番いいのですが、価格は高い順に③、②、①となります」
牧原さんは「予算があるならぜひ③のチタンカップを使ってみてほしい」と言う。フカセ釣りは1日の釣りで何度もマキエを撒くので、軽くてマキエ離れがよいマキエシャクだと疲れにくいからだ。
カップの大きさについて
「(マキエシャク)のカップの大きさは、Mがスタンダードです。
ただ、マキエを一度に多く撒いて魚をより多く集めたい、活性を一気に上げたいという方はLを、逆に少量を継続して撒きたい方はSを選びます。
マキエシャクを複数持たれている方はこんな感じでカップの大きさを効果的に使い分けています」
牧原さんがすすめてくれたMサイズは遠投も可能で使いやすいサイズ。小さいSサイズだと風が強いと遠投が難しい。大きなLサイズは1回のマキエ量が増える分、重くなり、非力な人だと腕への負担も大きくなる。
まずはMサイズからスタートして、自分のフカセ釣りスタイルに応じて必要を感じたら異なるサイズのカップを購入してみよう。
シャフトの硬さ
フカセ釣り用のマキエシャクのシャフトはカーボン製を選びたい。ただ同じカーボン製でも、商品によってそれぞれ特徴があり、硬いものも軟らかめのものもある。
硬いシャフトは左右へのブレが少ないのでマキエの飛ぶ方向をコントロールしやすく、しっかり振って止めることで反発力が生まれて遠投が可能となる。
一方、軟らかいシャフトは軽い力でもしっかり曲がるので、特徴を活かせば飛ばしやすい。
「(同じ製品でも)硬軟は人によって感じ方が違うので、どこからが硬くてどこからが軟らかいと決めるのは難しいところがありますね」
体格や力、投げ方によって人それぞれに感じる硬さが違うそうだ。
牧原さんは、コントロールよく遠投するために以前はかなり硬いシャフトのマキエシャクを使っていたが、ヒジを痛めてからは軟らかめなシャフトを使っているという。
「(ヒジを痛めて目)硬いシャフトを振って、ピタッと止める動作がしにくくなったんです。そこで軟らかいシャフトに変えたんです。最初は慣れないので苦労しましたが、慣れてくるとカバーできるようになりました。ヒジへの負担も減りましたね」
マキエシャクに合わせて投げるスピードや力加減、フォームを合わせていくことも大切とのこと。
ただ、人が合わせられない部分もあるので、使っていて違和感があるなら違うタイプのマキエシャクに変えてみるのも良いだろう。
価格&性能/はじめての1本
牧原さんが「価格と性能のバランスが良いですよ」とおすすめしてくれたマキエシャクを紹介(2018年7月段階のもの)
がまかつ『まきーなⅢ』
65cm、70cm、75cm、80cmの4種類から選べる。カップ容量15cc
ダイワ『ロングキャスターDRY』
長さは65cm、75cm。カップ容量は65cmが20ccと33cc、75cmは20cc。レッドとブルーの2食。
シマノ『遠投ヒシャクADVANCE』
62cmと72cmの2タイプ。それぞれにカップサイズはM(18cc)とL(30cc)がある。カラーはブラックとレッドの2色。
その他に牧原さんがおすすめしてくれたマキエシャク。
左/ISO GEAR『EASY CASTER』、右/ベルモント『MR-511 LTロングターゲット「フッ素チタン」M-750』
取材協力/かめや釣具