2019年に8年ぶりのフルモデルチェンジとなったシマノのチヌフカセ竿のベーシックモデル『鱗海AX』。実売価格2万円台の竿とは思えない様々なスペックが詰め込まれたこの竿を、シマノジャパンカップクロダイの優勝者・百合野崇さんがインプレッション。
百合野 崇がNEW鱗海AXを実釣インプレ
百合野 崇(ゆりの たかし)/下関在住で東は広島、西は長崎県北エリアまでチヌを追う。シマノ磯フィールドテスター、マルキユーフィールドスタッフ、金龍鉤スペシャルプロスタッフ。第9回シマノジャパンカップクロダイ優勝者
『鱗海AX』とは?
「周囲からも、新しい『鱗海AX』ってどんな竿なのってよく聞かれるんです。この竿はシマノのチヌ竿ラインナップの中でベーシックモデルとしてユーザーに浸透しているということですよね」
百合野さんがこう語るNEW『鱗海AX』のフルモデルチェンジはなんと8年ぶり。この期間の長さは前モデルの完成度が高い証拠だと百合野さん。さて、それをどう上回ったのか? 注目のニューモデルに迫ってみよう。
その前にシマノのチヌ竿『鱗海』シリーズのラインナップについて紹介しておこう。
リンカイ アートレータ
シリーズ最高峰モデル。競技の釣り、条件が限られたなかで攻めていく竿。ほかの4種とは使う場面などが違う。04号というこのモデルならではの設定もある
鱗海スペシャル
食わせる、曲がる。チヌ釣りの楽しさを極限まで突き詰めたモデル。00号という極軟調子がこのモデルにだけラインナップ。まさにチヌ釣りのスペシャルモデル
鱗海マスターチューン
ベーシックロッドに「Xガイド」「パラボラチューンR」を搭載。ラインナップもシリーズ最多。鱗海シリーズの中心的モデル
NEW 鱗海AX
食わせる穂先、掛けたあとは曲がって粘る胴と、鱗海シリーズを踏襲したベーシックモデル。8年ぶりのフルモデルチェンジ
テスターになる前からシマノユーザーだった百合野さん。前モデルも愛用していて、NEWモデルで釣るのが楽しみだったとのこと
鱗海AX ベーシックモデル以上の性能
「前モデルも『スパイラルX』と『タフテックα』が搭載されていて、鱗海らしい食わせる穂先ときれいな曲がりを実現していました。ニューモデルもそこは踏襲しています。竿を持ってビックリしたのは、穂先にはIMガイドが、リールシートにはスクリューシートが採用されていること。ベーシックモデルでここまでやりますかー! という感じですね」
IMガイドはいまやおなじみ、ラインの穂先への絡みを大幅に軽減してくれるガイドシステム。穂先を繊細に使うことが多い鱗海シリーズには相性がよいのだと百合野さん。
スクリューシートはシマノオリジナル。リールをしっかりホールドでき、また握りやすさも向上。
「しかもすべりにくい加工がリールシートとエンドグリップにしてあって、手にフィットしますし、雨が降るなかでも安定した操作が可能になりますよね。ホント、すごい」
とのこと。
注目! スパイラルX
竿身がネジれにくく、竿の力を最大限発揮するシマノ独自の構造。軟調子の竿が驚異の粘りをみせる
注目! シマノオリジナルリールシート+しっとりグリップ
リールをしっかりホールドでき、握りやすい形状。そして滑りにくい加工で雨の日も問題なし
注目! IMガイド
穂先部分に搭載。繊細な釣りで糸絡みを激減してくれる小さくも強い味方
注目! タフテックα
しなやかな穂先は小さなアタリを逃さない。巻き込んでの折れ防止の効果も
シマノ 鱗海AX ラインナップ
新しい鱗海AXは全7種類。使い手に合わせた充実のラインナップ
7種類の中から、瀬戸内海などで使用頻度が高い「06号 530」と「1号 530」を百合野さんが実釣で使用した。
百合野さんが『鱗海AX』の実釣場に選んだのは広島県大竹市沖の小方港一文字波止。チヌの魚影が濃く、年間を通して安定した釣果が見込める場所だ。
鱗海AX 06号 530
まずは06号 530から。百合野さんの感覚では、追加されたIMガイドとスクリューシート、リールシート形状のおかげでとても快適に仕掛けを操作できるとのこと。2投目にヒットがあったが、小さいアタリを食い込みのよい穂先が拾い、アワせたあとは胴元の粘り強さがチヌをスッと浮かせた。
「曲がりの感覚は鱗海シリーズでいくと『鱗海スペシャル』に近いですね。さすがはベーシックモデル。しっかりとシリーズど真ん中の遺伝子を受け継いでいますね」
操作性、曲がりよし! 遠投力はどうか? 思い切り振り込んでもらったが、しっかりとウキの重さを胴に乗せて振り込めるとのこと。振り切ったあとのブレもない。
「上位機種の同号数と比べると胴元が太いので、さすがにそのぶんの抵抗はありますが、問題ないレベルです。最近のチヌ用のウキは重く体積も大きいものがスタンダードなのですが、しっかり対応してくれますね。フカセに慣れていて、『シマノのチヌ竿ってどんな感じなの?』と思われている方には最適ではないでしょうか。食わせの穂先ときれいで粘り強い曲がりを体験してほしいですね」
35cmのチヌを掛けてタメたところ。胴までしっかり曲がっているが、「チヌの力を竿全体で削いでいる感じがある」と百合野さん。
遠投力をチェック。しっかり胴にウキの重さが乗っていて、胴のパワーで遠投が可能とのこと。
『鱗海AX』06号 530でチヌを釣り上げた百合野さん。続いて1号 530を手にした。
鱗海AX 1号 530
1号は06号に比べるとパワーがあるぶん、張りもある。
「そのぶん操作性が高くなるので風があるなかでも使いやすく、競技の釣りでも活躍してくれそう」
と百合野さん。
「食わせる穂先は06号そのままに、掛けてからの胴のパワーが心地いいですね! 35㎝くらいのチヌを10m以上の水深で掛けましたが、タメるとすぐ浮きました。胴が粘りつつ、動きをコントロールできる感じで魚を怒らせません。障害物が多いとか、サイズが読めない場所などで活躍してくれそうです。チヌフカセを本格的にはじめたいという方にも最適なモデルですね」
遠投性能はどうだろうか?
百合野さんの感触は、
「パワーがあるので力が込められるぶん、06号よりも重いウキを強い弾道で飛ばせる。風があるなかでもしっかり狙いの場所へ投入できそう」
とのこと。
35cmクラスのチヌを掛けたところ。06号に比べると胴にまだまだ余裕がある。
遠投時もまだ胴に余裕がある。「もっと強い振り込みもできそう」と百合野さん。
「鱗海AXは全7機種あって、ラインナップ豊富なのもいいですね。軟調子なら0号、パワー重視、大物狙いなら1.2号や1.5号。操作性重視で中間バランスの06号、1号には5mもあります。使いやすいモデルが選べますね」
実釣ではチヌが連発!
この日は2投目からチヌのヒットがあり、お昼前の4時間ほどで2ケタを超えた。百合野さんいわく「これは魚影が濃い、広島湾というフィールドのおかげ」とのこと。
しかしチヌの活性はさほど高くない。マキエに寄りはしたが、食ってくるのは常に底で、アタリが小さく、穂先でとらえて掛けていかなければならなかった。新しい『鱗海AX』はその繊細なアタリをとらえることができるということで、百合野さんもそれを楽しんでいた。
「自分のタイミングでアワセを入れる。これは釣りの醍醐味のひとつですからね。アワせたときに竿の胴にズシンと乗ってくる重量感はいつもたまりません。特にチヌのフカセ釣りは軟らかい竿を使うので思い切り曲げて楽しめる釣り。0号で50㎝とも戦えます。そんなスタイルって、この釣り独特じゃないでしょうか」
これからチヌの活性が上向いて釣りやすくなってくる。チヌは波止、磯、イカダに渚と多彩なところで釣れる魚。釣りやすいフィールドで思い切り軟調子の竿を曲げて楽しもう!
『鱗海AX』は、食わせてアワせて獲る。その過程がしっかり楽しめる竿とのこと。
今回の百合野さんの仕掛け。普段はPEラインを使っているが、今回は初心者でも使いやすいナイロンラインを使用して実釣してもらった。
動画でも解説
釣行メモ
利用渡船/大知渡船
お世話になった「大知渡船」。船長の大知啓人さんは、港の近くでお好み焼き「アクア」も営む。釣り帰りに食べて帰る人も多いそうだ。