仕掛けの投入や回収、魚とのやり取りといった一連の流れのなかで、うまく竿をさばけるかどうかで釣果が変わってくる。ぜひともスムーズに竿をさばけるよう釣技を習得しておきたい。上達のコツを内海通人さんに紹介してもらった。
内海 通人(うつみ みちと)/広島在住のチヌフカセエキスパート。シマノ磯フィールドテスター、マルキユーフィールドスタッフ、ささめ針フィールドテスター
チヌ竿のおもしろさ
チヌのフカセ釣りでは4.5〜5.3mの磯竿を使います。竿が比較的長いのは、長い仕掛けを使うことができ、足場が高い場所で釣るときも対応できるからです。なによりチヌ用の磯竿はしなやかな胴調子で、チヌとのスリリングなやり取りが楽しめます。
その一方で、長くしなやかなチヌ竿に慣れないうちは、
「仕掛けが穂先に絡む」
「仕掛けが投げにくい」
と戸惑うことも多いと思います。快適に操作するにはコツがあります。まずは竿の穂先と胴に意識を向けてみましょう。これができるとチヌ竿での釣りがもっと楽しくなりますよ。
この曲がりで、じわじわ浮かせるのが楽しい と内海さん
穂先に意識を向ける
釣りの間は穂先に道糸が絡まないように注意しましょう。道糸が穂先に絡んだのに気付かずにリールを巻いて、穂先を折ってしまったというケースはよくあります。常に穂先に意識を向けてください。
仕掛けを手に持っているときは、ラインを少し張って穂先に道糸が絡まないようにしましょう。穂先は少し下げてやります。竿尻を脇に挟むようにするとやりやすいです。
仕掛けを流すときに道糸が穂先に絡みそうなら、海中に穂先をつけて軽くゆするとほどけることが多いです。それでもほどけない場合は手でほどいてください。
こんなふうに毎回穂先を見ながらウキも確認します。最初は面倒に感じるかもしれませんが、慣れると意識しなくても自然に穂先を見るようになりますよ。
胴に意識を向ける
チヌ竿は胴の力をしっかり使ってやることで仕掛けを投げるのも、アワセもやり取りも快適にできます。とにかく胴へ力をかけるように意識して、仕掛け投入やアワセ、やり取りを行いましょう。
コツは感覚的なものになりますが、「物を持ち上げるときに腕の力だけでなく、腰も使うとけっこう重いものでもすっと持ち上げられる……」。この感覚です。
投入/胴の力を使いこなす
胴の力をうまく活かして投げると、まっすぐ遠くに仕掛けを飛ばすことができます。
①サシエをセットしたら穂先に重みを乗せた状態にする。
②ゆっくり竿を後ろに回す。
③胴を曲げることを強く意識して振り込む。
④竿を倒して力を開放。腕力ではなく、胴の力とウキの重さで飛ばす。
⑤仕掛けが着水するまではこの姿勢をキープ。
大切なのは写真②から③のとき。振り込むときにしっかり胴を曲げます。④でその曲げた力を開放。⑤の角度で竿をピタリと止めると、仕掛けがきれいに飛んでいきます。
サシエをつけずに、力の入れ具合を変えながら何度も振り込んで練習してください。※練習は広い場所でオーバースローで行いましょう。
投入後は穂先を海面に近づけて、楽な姿勢で仕掛けを流しましょう。
アワセ/立て過ぎくらいでちょうどいい
アワせるときのタイミングはさまざまではありますが、共通していることが3つあります。
①糸フケをある程度とっておく
②竿の胴に重さを乗せることを意識する
③竿は「立て過ぎかも?」と思うぐらいでちょうどいい
①はハリにしっかり力を伝えてチヌの硬い口にハリを貫通させるために必要なことです。竿を立てるのでアワセ前の道糸は少したるんでいるくらいでOKです。魚がアタっているときに慌ててラインを引っ張り過ぎないようにしましょう。
②はキャストのところでも出た話です。胴は竿のもっとも強い部分なので、ここに魚の重さを乗せるようにして、竿を立ててアワせましょう。そうするとハリへの力が最大限に伝わりますし、やり取りの主導権をこちらが握りやすくなります。胴調子のチヌ竿では、特にこの意識が重要ですね。
③は竿の角度です。しっかり立ててやることで胴調子のチヌ竿は胴に重さをしっかりと乗せることができます。立てる角度は「これは立て過ぎかも」くらいでちょうどいい感じです。
以前の自分がそうだったのですが、かなり大きな角度で竿を立てたつもりでも、写真を撮ってもらったところ全然イメージより角度が低かったことが分かりました。ちょっと怖い気もしますが、思い切りが大切。慣れてくると自然と理想的な角度になります。
力いっぱいとか、スピードを速くではなく、ゆっくりでもいいので確実に行いましょう。その後で動作を素早くするように心がけると、よりスムーズな竿さばきができるようになります。
実際のアワセを写真で紹介します。
①アタったら余分な糸フケを巻き取ってタイミングをうかがいます。
②アワせを入れる瞬間。「胴を曲げる」を意識して行いましょう。
③立て切った瞬間。ここまで立てると胴の力がハリへとしっかり伝わります。このあとリールを巻きながら竿を倒して、やり取りの角度にしていきます。
やり取り/テンションを変えない
アワせたあとは魚とのやり取り開始です。スムーズに進めるコツは2つあります。
①竿の力を利用する。
②ラインテンションを急激に抜かない。
アワせたあとはそのままの角度をキープ。魚のファーストランに耐えてください。竿の胴の力で魚の体力を削ぎ取ってやりましょう。
水深が浅い、サイズが小さめなら、ファーストラン後にスーッと浮かせられることもあります。サイズが大きいとのされてしまうこともあるので、そこはドラグ調整か、レバーブレーキのオン、オフで対処します。
魚が走りを止めたらリールを巻いて寄せていきます。
手順はリールを巻きながら竿を下げて、再び竿をゆっくりと立てていきます。魚が抵抗すればそのままキープします。
抵抗が緩んだところでまた先ほどの手順を繰り返して浮かせにかかります。こうして水面まで魚を引き上げてやりましょう。
リールを巻きながら竿を下げるときはラインのテンションに注意です。
竿をスッと下げてリールを速巻きするのはNG。ラインのテンションが急激に抜けるのでハリ外れしたり、魚に走る余裕を与えたりします。必ずテンションを保ちながらゆっくり行ってください。
難しい場合は、竿を立てた状態をずっとキープしながらリールを巻き続けるとよいでしょう。この方法での取り込みは少し時間がかかります。
①魚の動きが止まるまではしっかりタメる。曲がりと引きを楽しもう。
②魚が動きを止めたらラインテンションを緩めずにリールを巻きながら、竿を少し下げる。
③再び竿を立てていく。魚が抵抗したらそこでキープ。
④魚が寄ってきたら、しっかり立てて胴の力で浮かせてやる。
取り込み/玉網入れ
最後は玉網(タモ)で取り込みます。
玉網を手に取るのは、魚が水面にしっかり浮いてからにします。片手で玉網を伸ばし、すくったあとは竿を股に挟んで両手で玉網を縮めてやりましょう。
①魚が浮いて抵抗をやめてから玉網ですくう。
②竿は足に挟むと両手が使える。玉網は持ち上げると折れるので、まっすぐの状態で縮めていく。
これでフィニッシュ!
内海さの仕掛け
※取材時(2018年)の内海さんの仕掛けです。